ペンタゴン・ペーパーズからウィキリークスへ
国家権力を監視するジャーナリズムはどう変わってきたか
「世界に類を見ない、公的機関による市民的不服従だ」
ダニエル・エルズバーグ
ずばりと物事の本質に迫るニュース番組として高評価を得る、
アメリカの独立系報道番組
『デモクラシー・ナウ!』。
ニコ生では、この革新的なニュース番組をトークと共にお送りしていきます。
今回のテーマは、かつてベトナム戦争を遂行する政府のウソを暴露し、
アメリカ政府を揺さぶった情報漏えい事件
「ペンタゴン・ペーパーズ」。
1971年6月13日、ベトナム戦争の政策決定を分析した国防総省最高機密文書、
「ペンタゴン・ペーパーズ」の一部をニューヨーク・タイムズ紙がスクープ。
そこには、歴代の政権が国民を欺き、
"泥沼"の戦争に引きずり込んでいった経緯が如実に記されていました。
今回お送りする映像では、当時事件の渦中で情報公開に奔走した3人の男たち、
内部告発者のダニエル・エルズバーグ、マイク・グラベル議員、
そして出版社であるビーコン・プレスのロバート・ウェストが、
あっと驚く型破りな展開のなかで果たしたそれぞれの役割を披露。
映像をご覧いただいた後は、
マス・コミュニケーション研究者の
桂敬一氏をスタジオにお招きし、
ペンタゴン・ペーパーズとジャーナリズムについて詳しくお話を伺い、
それを踏まえたウィキリークスの意義について考えます。
当時ペンタゴン・ペーパーズはどのように報じられたのか?
戦争報道の前進に与えた影響と、巧妙なメディア・コントロールとは?
ウィキリークスのジュリアン・アサンジは、第二のエルズバーグなのか?
番組では、ユーザーの皆さんのご意見・ご質問をご紹介いたします。
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【スタジオ出演】
桂 敬一(マス・コミュニケーション研究者、元日本ジャーナリスト会議代表委員)
土田修(東京新聞記者)
中野 真紀子(デモクラシー・ナウ!ジャパン代表)
[映像]
エイミー・グッドマン(ジャーナリスト、デモクラシー・ナウ!司会&総責任者)ほか
※ 特集映像は、米国Democracy Now!で現地放送用に編集されたものです。
※ この放送のタイムシフト視聴期限は 2012年2月26日となっています。ご注意下さい。【プロフィール】
桂敬一(かつら・けいいち)
1935年・東京生まれ。日本新聞協会に勤務、日本記者クラブ総務部長、新聞協会研究所所長などを歴任ののち、東京大学新聞研究所教授となり、以後、立命館大学などにも勤務、2011年3月、立正大学講師を辞任、大学教員生活を終わる。この間、マスメディア、ジャーナリズムに関する著作物を刊行するなど、評論活動にも従事。元日本ジャーナリスト会議代表。2005年からは「マスコミ九条の会」の呼びかけ人として会の活動に専念、2009年3月からは「沖縄密約文書開示請求訴訟」に原告共同代表のひとりとして参加。代表的な著書としては『現代の新聞』(岩波新書・1990年)、『明治・大正のジャーナリズム』(岩波ブックレット・1992年)、『日本の情報化とジャーナリズム』(日本評論社・1995年)、『21世紀のマスコミ』(共編著全5巻・編集代表。大月書店・1997年)、『新訂 新聞学』(共編著。日本評論社・2009年)など。
■URL『デモクラシー・ナウ!』HP:
(日本語) (英語)デモクラシー・ナウ!ジャパン Twitter:
@democracynowjp ■過去の放送
[10月: ウィキリークス特集]
「<完全版初公開>アサンジ×ジジェク対談」(10月6日放送)「アイスランドは情報天国をめざす」(10月27日放送)[11月: ショックドクトリン特集]
ナオミ・クラインの「ショックドクトリン」(11月8日放送)ウォール街を占拠せよ!反グローバリズムの旗手ナオミ・クライン(11月27日放送)[12月: アノニマス特集]
アノニマスの正体~源流は日本のネット文化にアリ?!~(12月15日放送)ハクティヴィズムと情報統制(12月20日放送)【Twitter】ニコ論壇公式アカウント:
@nicorondanハッシュタグ:
#nicoron詳細-----------------------------------------------
1971年6月13日にニューヨーク・タイムズ紙がスクープしたのは、ベトナム戦争に関する国防総省の最高機密文書。「ペンタゴン・ペーパーズ」と呼ばれ、ベトナム戦争に関してアメリカ政府がどのように政策決定を行ってきたかを第二次大戦直後からの歴史をたどって分析した、国防総省の7000ページにわたる極秘の内部報告書、通称「ペンタゴン・ペーパーズ」です。そこには、歴代の政権が不拡大を約束しながらも、実はトンキン湾事件をでっちあげて直接介入を始めたこと、北ベトナムだけでなくラオスやカンボジアも爆撃して故意に戦線を拡大したことなど、国民を欺いて"泥沼"の戦争に引きずり込んでいった経緯が如実に記されています。
ニクソン政権は出版差し止め命令を出すも、ニューヨーク・タイムズ側は聞き入れず、ついに最高裁が政府の命令を違憲とする判定を下すという劇的な展開に。そして、諜報活動取締法や国家反逆罪といった政府の脅しにも関わらず、『ワシントン・ポスト』などの他紙も続々と「文書」の公表に踏み切り、大手マスコミが国家に反抗するという前代未聞の事態が発生。
「世界に類を見ない、公的機関による市民的不服従」 と称えるのは、長期の投獄を覚悟で最高機密文書をリークしたダニエル・エルズバーグ。ランド研究所から国務省に出向して「文書」の執筆に参加していた彼は、政府のお尋ね者となり、地下に潜伏しながら文書の公開に奔走。
そして、ニューヨーク・タイムズの華々しい快挙に埋もれてあまり知られていないのが、ビーコン・プレス版の存在。反戦派だったマイク・グラベル上院議員はエルズバークの示唆のもと、上院小委員会で「ペンタゴン・ペーパーズ」を読み上げることで、議事録として政府の公式記録に残しました。1971年7月には、大手の出版社がどこも敬遠する中、非営利小出版社のビーコン・プレスはグラベル議員による公表をもとに全文を出版。その結果ニクソン政権にらまれ2年半にわたって嫌がらせと脅迫を受け、倒産や刑事訴追の危機に見舞われました。一見、それほど目立たない彼らの活動が、中途半端な巻く引きを許さない力として働いていました。