[会員限定]新幕末ラジオ　第88回

「まったく許せないよ。」
夜の開発室で、ディスプレイから出る青白い光に目を細めながら彼は言った。
「スマブラの遠距離の奴ら、ボクに近づいてこないんだ。」


「そりゃあ。」
ペンタブを机の上に置きながら私は彼に顔を向けた。
「君のテリーが恐ろしいからだろう？近づいてこない、じゃなくて近寄れないんだな。」


「男らしくないね。」
苦々しい表情でうがいをしたあと、机の上のビニール袋に吐き捨てながら彼はそう言った。
「遠くから弾をペチペチ撃ちやがってさ。楽しいのかな、それ。ボクは認めないね。男らしくない。」


「男らしくない…か。例えば、猿みたいな弱パン擦り、後隙ゼロのジャンプダンク、当たる前からコマンド入れ込んでる空N、お願いブッパゲイザーみたいな？」

「それって、ボクのことを言ってる？」
「まさか。」
ペンタブを再び握った右手を軽く上げて、私は彼に微笑んだ。
やれやれ、今日の晩御飯は山岡家だな。
そんなことを考えながら、私はブラインドの隙間から見えるストロベリームーンをじっと見つめていた。