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『風と共に去りぬ』といえば、ほとんどのひとがヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブルという美男美女のスター主演によるハリウッド映画の名作を思い浮かべるのではないでしょうか。
マーガレット・ミッチェルによる原作の小説(1936年)は10年の歳月をかけて執筆され、刊行翌年にはピューリッツァー賞も受賞した大作です。しかし、日本では翻訳の難解さもあり、映画やミュージカルのヒットの陰で、近年はさほど読まれていなかった感があります。
2015年、初版から80年を前に、新潮文庫(鴻巣友季子訳)と岩波文庫(荒このみ訳)と、相次いで新訳が刊行されました。2018年には鴻巣氏による『謎解き「風と共に去りぬ」』が出版され、精緻な作品分析に基づく大胆かつ新しい読みが提示されることになります。
本イベントでは、新潮文庫版の翻訳者である鴻巣氏をお迎えし、ゲンロンの東浩紀、上田洋子が聞き手となって、同作の魅力と現代性を探ります。
スカーレットはどんな主人公なのか。映画ではなにが描かれなかったのか。従来の翻訳ではなにが抜け落ちてしまっていたのか。ドストエフスキーのポリフォニー小説との共通点はどこにあるのか。
南北戦争と戦後の再建時代を約10年にわたって描いたこの小説は戦争文学でもあるでしょう。この作品は、差別的な描写があると糾弾されることもありますが、そうした創作態度には、歴史を美化せず、その暗部を記録する誠実さを見ることもできるはずです。恋愛小説ではない『風と共に去りぬ』の読みを通して南北戦争とその時代が、現代アメリカ社会にいかに色濃く影を落としているかについても考えてみたいと思います。
※ 緊急事態宣言の再延長に伴い、鴻巣さんはビデオ通話を使用しての出演となります。