現代美術と宗教思想のあるべき関係を問う、連続講義(レギュラー番組)です。
近代以降の美術は宗教を切り離し、自立を果たしたと言われてきました。近代美術の延長線上にある現代美術においても、宗教というテーマは実に厄介なものとして、時にはタブーのように避けられることすらあります。
しかし、美術史全体を見渡せば、宗教とまったく関係を持たない美術などほとんど存在しません。まして、特定の宗派やイデオロギー以前の「宗教的なもの」と美術を切り離すことは不可能でしょう。
現代社会では良かれ悪しかれ、実に多様な「宗教的なもの」が増殖しています。それと同時に、多くの実践者や研究者によって、宗教についての思想が展開しています。最先端の宗教研究や宗教思想の成果は、現代美術に対しても様々な問いを投げかけてくるはずです。
本講義では、レギュラーゲスト講師として宗教学の亀山隆彦さんをおまねきして、主に仏教思想の見地から、現代美術と宗教思想の関係性を探っていきます。
第2回目のスペシャルゲストは、近代以降の仏像を研究されている君島彩子さん。君島さんは今年、アジア太平洋戦争の激戦地に建立された「マリア観音」と戦争死者慰霊についての論文で、第15回「涙骨賞」を受賞されました。
https://www.chugainippoh.co.jp/info/ruikotu/ruikotu015-01-001.html
現代もなお、作られ続けている「仏像」と慰霊の関係を、フィールドワークを通じて問いかける君島さんの研究を紹介しながら、現代における「慰霊」のかたち、「祈り」のかたちについて議論していきます。