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【This War of Mine】 戦争の影で生き延びる市民達

(30分)

黒トゲ
数年前は誰しもが、戦争とはゲームやテレビの向こうか、紙面の中のものだと思っていた。
さっさと逃げ出せば良かったのだが、こんな戦いはすぐに終わるという望みが、その足に絡みついた。
今の我々は、水と食料は常に欠乏し、誰もがふさぎ込んでいる。
動ける者は、動けない者の運命も背負わなければならない。
平時には陳腐に思えた信頼と協力は、今は生命線であり拠り所だ。

廃屋を物色中、鉢合わせた人を刺した。
相手は銃を持っていた。盗られる訳にはいかない、仲間の傷を手当てしなければ
仲間は慰めてくれたが、殺人者という拭えぬ枷が心に重しがのしかかる。
人を助けたこともある。誰かの為でもない自分がまだ人間である事の証明だ。
ただ助けたというその事実が、すさんだ心を幾分か癒やしてくれる。

数日前に病に倒れた彼は、飢餓と寒さで瞬く間に悪くなっていった。
彼はこの境遇を呪い、足手まといになっている事をしきりに悔いていた。
酔いの中に溺れさせれば良かったが、この寒さの中では酒造りのための少ない薪を使う訳にもいかない。
今朝、彼は自らにナイフを突き立て、血の中で溺れていた。
彼にとっては口減らしのつもりだったのかもしれない。
だが、目の前に広がる仲間の死は圧倒的であり、心の壁を圧壊させるに十分だった。
それは気丈の裏に、終わらない不安を隠して生きている者には過酷すぎた。

これは生存という名のもう一つの戦争だ。

およそ3年半以上にわたり全土で戦闘が繰り広げられた結果、
死者20万、難民・避難民200万が発生した。
女性に対するレイプや強制出産などが行われ、
各地で生き残った市民同士の略奪など、最悪の紛争となった。
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材に作られたゲームとのこと。
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