水卿です、どうも水卿です。 久しぶりに友人の家に遊びに行ったんです。 そしたら、滅茶苦茶汚くて入れないんです。 部屋のいたるところにゴミが散乱していて足の踏み入れ場がないんです。 ゴミ屋敷と化していたんです。 なんか、薄汚れた絨毯の上にカップ麺やゴンビニ弁当の残骸が転がっていて。 ソファの上には女の子のイラストが描かれた小説が積み上げられていて。 埃を被った雑誌の周囲に通販の商品が収められていたダンボールが無造作に投げ捨てられていて。 食器類はカラフルな色彩のカビの繁殖場になっていて。 11月だというのに、ちょっと暖かいんです。 生暖かいんです。 なんかこの部屋だけ特別な生態系ができあがってるんじゃないかと。 そんな感じなんです。 えらいところに来てしまったぞって感じなんです。 なんなんですか、ここはと。 ここに住んでいるのですか貴方はと。 こんな環境で生活しているのですかと。 しばらく会わなかった間に何があったんですかと。 そんな感じだったんです。 で。 こっちは泊めてもらう算段だったので。 かなり目算が狂ったといいますか。 こんな部屋で眠ることなんてできません。 そうだ、掃除をしよう。 そういって部屋を片付けることにしたんです。 友人も部屋が奇麗になるのは嬉しいらしく、喜んで協力すると言ったんです。 協力するのは私なんですけど。 まあ、それで半日かけて部屋を片っ端から片付けたんです。 読まない小説は古本屋に売却して、ゴミ袋をホームセンターで大量に買い込んできて、目に付くものを次々と詰め込んでいったんです。 40リットル入りのゴミ袋が12袋程満杯になった頃。 地層のようになっていたゴミの最下層の辺りから。 なんかファイルに閉じられたルーズリーフが出てきたんです。 なんとなく手にとって中を見てみたんです。 そしたら小説みたいなんです。 不慮の事故で恋人を失った少年が、亡き恋人との約束を果たそうとする一方で新しい出会いとともに成長していく。 みたいなお話。 なんじゃこりゃとペラペラページをめくっていると友人が血相を変えて飛び込んできたんです。 私からファイルを奪い取ると、そのまま数秒躊躇したあげく引き出しの中に押し込んでしまいました。 どうやら、奴の書いた小説らしいです。 奴が学生時代に書いた小説らしいです。 恥ずかしいから読まれたくないけれど、捨てることもできない。 そういうことみたいです。 「小説家になるんだ」 学生の頃、奴はよくそう言っていました。 私も学生時代を思い出しましてね。 奴とは同級生だったんですが。 よく仲間達と一緒に夢を語ったもんですなぁと。 取り戻せぬ過去に想いを寄せたんです。 思わず二人で学生時代の話に華を咲かせたんです。 そしたら、いつの間にか日が暮れていて。 気がついたら日が暮れていて。 窓の外は美しい夕焼けに染まっていて。 掃除は全然終わってなくて。 半分くらいしか終わってなくて。 窓から冷たい風が吹き込んできて。 大掃除の最中だから床には荷物が所狭しと並べられたままで。 布団敷いて寝ようと思ったら、まだ数時間は格闘しなきゃいけないような状態で。 これはマズイって思ったんです。 これは本気でヤバイって思ったんです。 で。 帰りました。 放置して帰りました。 終わりそうにないんで帰りました。 友人は何か喚いてましたが無視して帰りました。 自宅の布団は暖かかったです。