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十コスリ半劇場

(10分)

yasuyoshiaoki
かれは泣きながらくずおれる――「もう一発射ってもいいだろう、な?」「もちろんだとも――情報を提供してくれた後で、クスリを抜いてやろう」「クスリを抜いてやろうだとさ――ああ、このおれのザマを見てくれ」「悪くないですよ、こちらの目的のためには」「糞だ――天王クソ――おれの人間イヌどもはそれを喰うんだ――そしておれは、連中に鼻面をそれにこすりつけてやるのが好きなんだ――美――詩――空間――そんなものが、このおれの一体何の役に立つ? 映像をキメなかったら、おれはオーブン送りだ――わかるか?――苦痛と憎悪の映像がすべて解き放たれる――これがわかってんのか、この間抜け野郎めが! おれはこれでおしまいだが、お前の目玉はまだ飛び出すぜ――思春期の映像キャンディーがはだかでパナマ――だれ見通しが違う?――てめえらみんな、煮詰めて皮をひん剥かれたマンドレイク――」「D さん、アポモルヒネの化学式をよこしてわれわれの仕事を楽にしてくれたほうが、あんた自身のためだとは思わんかね」「おれには効かない――おれのこの中毒には――」「なぜわかる?――試してみたのか?」「まさか――もしだれかにその開発を許可したりしたら、そいつは抜けてしまうんだ、わかってんのか? 抜けが一人でも出たら、それだけでおれの注射器のトレーを蹴飛ばすには充分なんだ」「そうは言っても、あんたに選択の余地はなかろうが」再び映像がカッチリと戻り、古い映画のようにすぐにあせてはチラつく――「おれにはまだ委員会調書がある――この惑星なんか、明日にでもまっ二つだ――そして貴様はだ、このネズミ野郎め、貴様はオーブンの中で氷漬けだ――通称アラスカ焼き――おれを植物にしとくには、アラスカ焼きに勝るものなし――いつだってお利口さんが、群れなしてアラスカ焼きを待ちわびてるんだ――」小人の目は青い火花を散らした――肉の焦げる匂いが部屋を吹き抜ける――
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