今年5月、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン」が、ユネスコの諮問機関・イコモスにより世界文化遺産に登録するよう勧告を受けた。
6月24日からの世界遺産委員会により、正式に登録され、日本で22番目の世界遺産となる見通しだ。
しかし、その内容を丹念に見ていくと、いまなお「かくれキリシタン」の信仰を維持している生月島(いきつきじま)が、構成資産に含まれていないことがわかる。
それどころかいまや、長崎県が制作したパンフレットにも、生月島の写真や信仰のありようは掲載されていない。
なぜ、いまに息づく「かくれキリシタン」の姿を隠す必要があるのか。
綿密な取材でその真相に迫ったのが、広野真嗣『消された信仰』(小学館)である。
本書は、自ら「ペーパークリスチャン」と語る広野が、たまたま手にとった画集『かくれキリシタンの聖画』で、「ちょんまげ姿の洗礼者ヨハネ」を目にしたところから始まる。
一見異様でありながら、素朴な信仰のありようを感じさせるこの絵をきっかけに、広野は生月島へ何度も足を運ぶ。
信徒が激減するなか、いまなお受け継がれる独自の信仰の姿。そしてそれを認めようとしてこなかったカトリックとの関係性……。
400年以上にわたる迫害と軋轢、そのなかで培われてきた伝統と信仰。
探求はいつしか世界遺産そのものの意義や、キリスト教とはなにか、信仰とはなにかにまで踏み込んでゆく。
ゲンロンカフェでは本書の小学館ノンフィクション大賞受賞を記念し、同賞の選考委員であり、自らもノンフィクション作家として『謎の独立国家ソマリランド』をはじめ数々の傑作を発表してきた高野秀行とのトークイベントを開催。
この国の知られざる歴史が見えてくる!
世界遺産が黙殺した「最後のかくれキリシタンの島」 – ゲンロンカフェ
http://genron-cafe.jp/event/20180627/