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みんなが大好きな 福田和也さん特集 季刊ELECTRIC KIMCHI LAND

(29分)

青木やっちゃん
    『自分のやってることくらい、ちゃんとわかっとるわい……少なくとも虫垂学は……だがそこで止める必要があるかね?? 敵は麻酔にかかっていてわれわれは前進……メスをもう一本取ってくれ……こいつは汚ない……』外では街場の少年たちの合唱:『フィンガロ?? たばこを一本?? どうもほんとにありがとうございます……でかいの一発いかが?……馬鹿ヤロくそタレ……』『さあ消えちまえ、このろくでもない青二才のカエルどもめ』と医師は歯をむきだして、かれらに偏桃腺を投げつける……『子宮腫瘍でもあればよかったのに……セメント袋みたいなやつ……うまくいけば一人くらいは仕留められる……おい、そこの看護婦……たばこを消さないか……この患者の肺を詰まらせる気か??』ラウドスピーカから分娩室の金切り声が響きわたる……技師は炭酸のソーダをミックスして手の中にゲップ……『オエップ、オエップ、オエップ……このクソ装置ときたら、屁まで一つ残らず拾って放送してまわりやがる』忌まわしい死の叫びが鳴って計器盤を覆い焦点をぼかす……白い死の無臭が監獄の禁断症状ジャンキーの房から手術室を駆け抜ける……医師は不吉にへたりこんで、患者の大腿動脈を切断……『おれは死ぬ……気絶する……倒れる……あの病気のクソ苦力どもめ、人のヤクをすっかり抜いちまいやがる……』かれは薬だなのほうによろよろと向かい、患者の血をその後に引きずる……『神の愛にかけて、モルヒネを一本』)これはわたしが『ポスト・ガゼット』のために書いた小劇です……ステージ上の麻酔でして、手術中に記録されたことばは一番確実なエングラムとなります……手術の苦痛と呼ばれております……わたしも今感じています……偏桃腺にです……エーテルのめまいです……(患者は出血過多だ……看護婦……鉗子だ……急げ、患者が死ぬぞ)……こうした苦痛旅行者の別の装置は、信号スイッチです……かれらが言うところの『イエス ノー』です……『愛してる愛してない』を超音波レベルで入れ替えるんです……オルガズムの音をとって、それを拷問や事故のうめき声や絶叫と混ぜて、それに手術室での冗談も混ぜて
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