無線技師フィンチは炭酸ソーダをまぜて、手の中にゲップをする――「SOS――ゲップ――あのクソ船長のクソいじり野郎め――SOS――ジャージー沖合――SOS――プンプン匂ってきやがる――SOS――あのろくでもない船員ども――SOS――ゲップ――同志フィンチより――SOS――ブタのケツにはまった同志より――SOS――SOS――SOS――ゲップ――ゲップ――ゲップ――」船長は軽やかに無線室に踏み込む――遠くからの目撃者によれば、技師が逮捕されると同時にとどろく爆発とまばゆい閃光が見られたという――船長は技師の死体をおしのけて無線装置を椅子で叩き壊す――Our flag was still there船長は老婆を突き飛ばして最初の救命ボートに乗船――ボートは男性乗客たちの手であぶなっかしく水面に下ろされる――ベンウェイ医師が索をといた――船員がオールを漕ぐ――船長はふくれあがったスーツケースを撫でて船を振り返る――Oh say do that star spangled banner yet wave時間がしゃっくり――乗客が救命ボートK9 のまわりで争う――これが下ろせる最後の救命ボートなのだ――道徳再武装運動家にして神学校三年生のジョー・サージェントは、群集からすりぬけて、ボートのへさきにパーキンスの席を用意してやる――パーキンスはあごをひいてそこにすわり、目を輝かせて右手に大きな肉切り包丁を握りしめるBy the twilight’s last gleamings