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グラマトロジーについて

(30分)

青木やっちゃん
    空気はひりつくほど澄んでいてそれが身体を支えてくれるようで、動作がとてつもなく正確かつ用意に実行できた――かれは振り返ると峡谷を降って水たまりに戻っていった――すると脳内にクリスタル炎のようなカチリ感を感じて銀色の声が聞こえた:「見知らぬ者よ、こい」――ブラッドレーはテレパシー現象には慣れていたがこの声は異様に明瞭で差し迫った感じだった――かれは大きな岩によじ登って水たまりを見た――友人はまだ寝ていた――その隣には両生類の緑魚少年が座って水たまりの水を浴びている――その生き物はさざ波のように肉体を満たす半透明の緑の光線で脈打つ――頭はとんがったドーム状でそれがのびている細い首のりょうがわにはえらがつきだして、繊細なスポンジ状の翼のようだ――生き物は膜状の物質で覆われそこに透明な血管網が走っている――体表面は絶えず動いていてゆっくりとした水が彫刻から滴るようだ――顔はほとんど平らだが唇と鼻は鮮明かつ美しく描き出され高い縁の頬骨の上の大きな液状の目は繊細な構造でそれが半透明の皮越しに輝き出す――その生き物はあぐらをかいてすわっていて、その太股からは細かいガーゼのような小さい銀のひれが飛び出している――細い筋肉質の脚が網状の水かきで終わっている――脚の間にライキンは、好奇心で勃起しかけた性器をを見て取った。魚少年は眠る同僚の頭をなでて、その長い緑の指の何気ないジャブで宇宙服に触れる――ライキンは慎重に動き、生き物が驚いて水たまりに戻らないようにした――魚少年はふりむいて、恥ずかしげな夢見るような微笑みでかれを見た――電気的な身震いが背筋を走り、それが結晶した魚音節で爆発;「見知らぬ者よ近くにこい――恐れるな」――生き物の口は動いていなかった――ライキンは全身に駆けめぐる興奮を感じつつ前進して水少年の横にひざまずくと相手は水の滴る手をのばしてこちらの肩を軽くつかんだ――その接触で全身にスリルが走る――水中記憶泡が脳内で爆発――かれは異星の媒体の中にいて結晶岩水たまりの中で身をくねらせ石灰岩のふちでひなたぼっこしつつ、滴る水の音の中で巨大な杉の木に扇がれる――荒廃した都市の中を水生物たちといっしょに泳ぎゆっくりしたオルガズムのうねりの中で身をよじりつつ、色つきあぶくの爆発を水面に打ち出し、青い軌跡を残す――
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